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自家製クラテッロを仕込む

イタリア生ハムの最高峰クラテッロ(Culatello)を何とか作ってみたいと、ずっと考えていました。
イタリアのジベッロ村で作られるクラテッロ・デ・ジベッロ(Culatello di Zibello)は、豚の後ろ足の最も美味しい部分、正確には後腿の若干内腿寄りの部分だけを塩漬けし、膀胱に詰めて吊るし熟成させる生ハム。
調べることは沢山ありました。
切り出す肉の位置や切り出す形、塩漬けの濃度や期間、膀胱の前処理、肉の整形方法、紐の縛り方、熟成のさせ方、黴の程度、食べる前の清掃の方法など・・・全然書ききれない位。
その一つ、切り出す肉の位置や切り出す形についてだって、日本語になった数少ない資料には尻肉を使うとか、内腿とか、いい加減なことが書かれてたりするけれど、勿論、尻肉(ランプ)部分などは使わない。
正確で、詳細な情報を得るにはイタリア語の資料、イタリアの動画などから得るしかないのです。
色々調査して、作れる程度まで何とか判ってきて、トライしようとしたのが2年前。
でも作るための情報が判っても、現実に作るにはまだ難点がありました。
例えば、「豚の膀胱って何処で手に入るの」・・・
それでも何とかお友達のおかげで、国産豚膀胱を10個程手に入れられたのです。
でも、その膀胱が全然小さい。
息で膨らましてみたり、挙句はコンプレッサーを持ち出して膨らましてみたのですが、何個試しても大して大きくはならないのです(下写真:この写真はお友達のOさんのをお借りしました)。



こんな小さなサイズではクラテッロには使えない。
結局、お茶目なお友達のおもちゃになってしまいました(爆)(下写真2枚:この写真はお友達のOさんのをお借りしました)



フレンチではヴェッシー包みという伝統料理があります。
有名なところではポール・ボキューズの「ブレス鶏のヴェッシー包み」で、これは豚の膀胱に丸ごと1羽のブレス鶏を詰めて火を通すもの。
youtubeなどを見れば、膀胱のサイズはバレーボール大で、前述のお友達のおもちゃになった膀胱とは全然違うサイズ。
これは日本の豚が膀胱が小さい種類だということではなく、主に出荷までの肥育日数の差、結果として出荷時の豚体重の差からくるものです。
ヨーロッパでは豚体重150kg~200kg超で出荷されるのに対し、日本では100kg位。
特に最近は、病気にならないうちにと早めに出荷されるケースも多く100kg未満が多いように感じます。
豚のサイズが違うのですから、膀胱サイズも違って当然なのでしょう。
でもさらに調べると、フランスでもヴェッシー包みに使う生膀胱が手に入り難く、中国産の乾燥膀胱を使っていたこと、現在ではその中国産の乾燥膀胱も入手困難で、古典的な形のヴェッシー包みに出逢うケースは結構稀になったようなのです。
もちろん日本のフレンチの店でもフランスに倣い、中国産の乾燥膀胱を入手しようとしたそうなのですが、どの店も手に入れられなかったというのが現状のようです。
ということで、私達の長年のクラテッロへの挑戦も、膀胱の入手がネックとなり、又頓挫中だったのですが・・・・・

さて頓挫から2年後。
私達の原木生ハム作りの仲間の中に中国で幅広くビジネスをやっているお友達がいます。
駄目元でわらびさんが彼に中国での入手を頼んでいたのですが、何とその入手困難な乾燥膀胱が数十枚も手に入ったのです。(°O° ;) オッドロキー!
・・・と書くと、「うちにも分けてくれ」とか「入手先を教えて」などというコメントが必ず来るのだけれど、今回はその手のお願いはお断りします。
この乾燥膀胱は通常手に入るものではありません。
たまたま今回は僥倖に恵まれ手に入ったけれど、これは極めて稀なケース。
我々だっていつまで自家製分を確保できるか判らないのです。

さてこれが今回入手できた中国産乾燥膀胱(下写真)。
Kさん、ありがと~♪
乾燥物でも結構臭いです(笑)。



そして、これが臭みを抜きながら戻してみた膀胱1個です。(下写真)。



さて、最難関の膀胱も手に入り、これで全ての問題は解決したのですから、早速、お友達とクラテッロ仕込みをすることにしました。
一頭の豚膀胱に詰めて縛り上げる正統派のクラテッロ作りは、私が知る限りではこれが日本初になると思います。

[ クラテッロ仕込み Step1(塩漬け編) ]
今回のクラテッロ仕込みメンバーは、わらびさん、Fujikaさん、Segawaさん、私の4名なので、国産豚原木も4本手配しました(下写真)。



これまでのハモンセラーノタイプの原木生ハム作りでは、仙骨(尾骶骨)は除去しても寛骨(骨盤、正確には腸骨)は除去しないやり方でしたが、クラテッロ仕込みでは最初に仙骨と一緒に寛骨も除去することにしました(除去しなくても、クラテッロ部分を切り出すことは可能です)。(下写真)



除去された寛骨&仙骨(下写真)。



原木生ハム仕込みと同様に血抜きをした後、クラテッロ部位とフィオッコ(Fiocco)部位を切り出しました(下写真左:フィオッコ部位、右:クラテッロ部位)。


頭初に記述したように、後腿の若干内腿寄りの部分がクラテッロになる部位、そしてその反対側、つまり前腿の若干外腿寄りの部分がフィオッコになる部位。
クラテッロとフィオッコは同じ作り方で、使う部位とサイズが異なります。
肉が無駄にならないようにクラテッロを作る時はフィオッコも対で作るようです。

切り出したクラテッロ&フィオッコブロックを塩漬けし、Step1は終了。
このまま温度の低い場所で1週間塩漬けします(下写真)。
塩だけではなくブラックペッパーを使うレシピもありますが、この日はブラックペッパーは忘れたので、塩のみとなりました。



ところで、クラテッロ&フィオッコのブロックを切り出した残り、主にランプ(尻肉)部分が主体ですが、結構な量が残ります。
これでサラミを仕込むなら理想だけれど、今回はそのまま持ち帰り、小分けにして冷凍に。
暫く豚肉には困りません(下写真)。



こちらは骨で、内訳は大腿骨、脛骨、腓骨、寛骨、仙骨(下写真)。


スープを取ろうかなとも思ったけれど、ヒタヒタよりずっと少ない水で、圧力鍋で蒸し煮60分。
腱もトロトロになったそれを、牛蒡、大根と一緒に黒糖と醤油で甘辛煮。
和風醤大骨とでも言うべきか。
骨まで齧れて、中の骨髄も普通に食べられる程まで柔らかい。
何だか骨だけでメインデッシュになりました(笑)。(下写真)



さて、その一週間後。
[ クラテッロ仕込み Step2(膀胱包み編) ]
一週間塩漬けしたクラテッロ&フィオッコブロックをさっと水洗いし、表面に残った塩を流し、キッチンペーパーで表面の水気を切りました。
戻した膀胱サイズは、塩漬けしたクラテッロブロックのサイズと比べると案外小さく、入りきるかどうか不安な位です。
取りあえず入りやすいように肉を丸めて縛りました(下写真)。



膀胱を切り開き、縛ったままの肉を包む。
縫い合わせながら肉を押し込んでいったら、何とか包めました。
余っている所は膀胱を引っ張りながら皺にならないように縫い縮めます。
縫う糸も、黴て分解する天然素材は使えません(下写真)。



縫合完了(下写真)。



頭の中で何度もシミュレーションしたクラテッロ縛り(下写真)。
紐も普通の天然素材のタコ糸は使えません。
縛った後に、膀胱表面に針で小さな穴を適当に開けてクラテッロの方は完成。



先にクラテッロを仕上げて慣れた所為とサイズが小さく楽なためか、フィオッコの方はすぐ出来ました(下写真左:フィオッコ、右:クラテッロ)。



早い遅いはあったけれど、メンバー全員、上手くできたようです。
左上から時計回りに、Segawaさん、わらびさん、私、Fujikaさんのフィオッコ&クラテッロ(下写真)。



出来上がったクラテッロ&フィオッコを自宅の2年熟成原木生ハムの隣に吊るしました(下写真)。



原木生ハムのように夏場は白樺湖に山上げする予定ですが、初めての自家製クラテッロなので、酵母菌、黴の発生具合や乾燥具合など、経過を見ながら最良な方法を取ろうと思います。
食べる予定は2年熟成させた後です。

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Comments 6

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kasugai90

苦労して、作ったクラテッロ。
2年後が待ち遠しいですよね~

ポチ、っと!

akkyan

長期熟成ですね。f(^^;)
う~む・・・それにしても膀胱かあ。。。f(^^;)
しかも臭いのかあ。。。(汗)
う~む。。。(笑)

duckbill

Re: タイトルなし

> kasugai90さん
これだけ作っているのなら2年はとても待ちきれないけど、長期熟成ものを色々作っているので、忘れているうちに来ちゃうような気もします(笑)。
ポチ、ありがとうございます。

  • 2018/01/24 (Wed) 00:28
  • REPLY
duckbill

Re: タイトルなし

> akkyanさん
ハイ、膀胱です。臭いです。その上極め付きのレア物で、時間もかかる。
・・・と書いてると何だかもう要らないような気がしてくる(笑)

  • 2018/01/24 (Wed) 00:39
  • REPLY
みゃおた煮

クラテッロ!
ネット上の海外の写真でその丸い姿をよく見かけ、「なんだろう?」と思っていたのですが、生ハムの最高峰だったのですね。

2年後の完成・試食記事が非常に楽しみです!

玩具になってしまった(笑)小さな膀胱ですが、
これ、bladder pipe(独platerspiel:チャルメラのリード部分に膀胱を被せた、中世ヨーロッパの管楽器)にジャストサイズなので、少々もったいないですね。

duckbill21
duckbill

Re: タイトルなし

> みゃおた煮さん

> ネット上の海外の写真でその丸い姿をよく見かけ、「なんだろう?」と思っていたのですが、生ハムの最高峰だったのですね。
イタリア生ハムの最高峰ですね。
クラテッロ作りは初めてだけれど、生ハム作りは大分年季も入って慣れてきているので、多分順調に出来る筈。
2年後には試食記事を掲載出来ると思います。

bladder pipeをネットで調べてみたら、確かにピッタリなサイズですね。
そうしてみると確かに勿体なかったかも。
でも小さいサイズなら国産豚の膀胱でいいので、これなら何時でも手に入るようになりました。

  • 2018/02/21 (Wed) 01:34
  • REPLY