今期最初のカラスミ作り
カラスミの作り方は随分以前から何度も書いていますが、参考にしてくださる方が、過去の記事をあちこち読み返すのでは大変ですから、年度最初のカラスミ作成なので、また一通り記述しました。
市場で購入したのは2腹。
No.1(単に区別のための符番です)は重量250.5g(下写真)・・・12/1日
No.2は重量257.0g(下写真)
最初の工程は血抜きです。
塩水の中で100円均一のデザインナイフの先で血管部分をちょっとだけ引っ掛けて傷つけ、先の滑らかな塗り箸等で、破れ目の方に血管に沿って皮を破らないようにしごき、血管内の血を抜きます。(参考記事)
血抜きの後は、表面の水分をキッチンペーパー等でしっかり吸い取って、塩漬けをします。
今回は重量の12%の塩量を塗して塩漬けです。
目検討でも構わないのですが、出来上がりの塩辛さを一定にしたいのなら、塩量を管理するのは有効です。
私は、もしざっくり切れている魚卵なら、切れている内部にも塩を振るので15%の塩量で、敗れていない綺麗な魚卵なら12%の塩量で塩漬けというルールを決めて作っています。
不織布のリードペーパータオルの上で両面隅々に、規定量の塩を塗し(下写真)、
そのままリードペーパータオルで包み(下写真)、
さらにそれを紙製のキッチンペーパーで包み、冷蔵庫で保管します(下写真)。
この工程は、雑菌に大変弱い水分の多い現状から、出来るだけ速やかに水分活性を下げ、内部に塩分濃度の高い、雑菌が生息し難い環境に持っていくという工程です。
この工程だけでは有りませんが殺菌工程でも有ります。
塩量をおさえれば、その目的が果たせません。
あまり塩がきつくないカラスミを作りたいという理由でこの塩漬け工程での塩を少なくするのは、本末転倒で、カラスミの好みの塩分濃度は塩抜き工程の塩抜き具合で実現します。
ということで、出てきた水分を速やかに除去したいと考えています。
不織布のリードペーパータオルは水分の透過能力は高いのですが、保持する能力は低いように感じられます。
一方紙製のキッチンペーパーは水分をよく吸い取って保持します。
なのでリードペーパータオルを通過した水分を、外のキッチンペーパーで積極的に吸い取る形式です。
内側のリードペーパータオルを交換すると折角振っている塩をこぼしたりするので、外のキッチンペーパーだけを濡れる度に頻度良く交換して行きます。
水分が出きって、キッチンペーパーが湿らなくなったら塩漬け工程は終了。
今回は6日間の塩漬けとなりました。・・・12/7日
外側に残った塩を流水で洗い落とし、キッチンペーパーで水分を吸い取り、重量計測します。
No.1は重量213.0gと元の85.0%(下写真)。
No.2は重量223.5gと元の86.9%(下写真)。
次は塩抜き工程となります。
まず、塩抜きに使う媒質についてです。
カラスミの塩抜きは、水に漬けて行うやり方が一般的だと思いますが、我が家のやり方は日本酒に漬けて塩抜きする方法です。
塩抜き工程では、内部の塩分濃度が下がるにつれ、塩抜きに使用する媒質(水や日本酒)を取り込み、水分活性が又、高くなるため、再度雑菌に弱い状態となります。
すぐに天日干しできれば何の問題も無いのですが、もし天候に恵まれずこの水分活性が高い状態で時間を置くと、腐敗する可能性があります。
水で塩抜きする場合でも、後で日本酒に浸して風味付けを行うのが一般的です。
塩抜きを日本酒でやれば、風味付けだけでなく、取り込んだ媒質が全て日本酒なので、殺菌効果があり、一石二鳥と考えています。
日本酒が勿体無いように思えますが、安価な純米の料理酒も販売されているし、塩抜き後の日本酒は、塩と魚卵の旨みが加算された料理酒として使えますので、無駄にはなりません。
次に塩抜きかげんのコントロールについてです。
水で塩抜きをする場合では、1~1.2倍重量に拘らず、大量の水を使用することができますが、このような場合では、塩抜き度合いは、純粋に塩抜き期間で決まります。
一方、日本酒を使った塩抜きでは、大量に使う事は出来ませんので、限られた量の日本酒で塩抜きすることになる訳ですが、この場合は塩が抜けるにつれ、日本酒側の塩分濃度が上がり、従って一定濃度以上は抜けません。
つまりこの場合では、塩抜き度合いは、塩抜き期間で決まるのではなく、使用する日本酒の量で決まります(量が多いほど塩が抜ける)。
ですから、日本酒が勿体無いからと言って日本酒の量をケチると、大変塩辛いカラスミになってしまいます。
私の場合は塩漬け後重量の1~1.2倍量の日本酒を使って塩抜きをします。
期間は1~2日。小さい魚卵は1日、それ以外は2日。
それ以上は単に酒を吸い込みぶよぶよになって、乾燥に時間がかかるだけで、塩が抜ける訳ではないので、2日を超えた日数は必要ありません。
今回は、PE袋に塩漬け後の魚卵と所定量(塩漬け後重量の1.2倍量)の日本酒を入れて封をし、冷蔵庫内で2日間塩抜きをします(下写真)。
そして、その2日後、塩抜きが完了しました。・・・12/9日
No.1の重量変化は
血抜き前生卵250.5g→塩漬け後213.0g(85.0%)→塩抜き後247.5g(98.8%)。
No.2の重量変化は
血抜き前生卵257.0g→塩漬け後223.5g(86.9%)→塩抜き後242.0g(94.2%)。
塩抜きが完了した魚卵をキッチンペーパーで水分を拭き取り、干し網の中で天日干し開始です(下写真)。・・・12/9日
干し網を使わないと、大事なカラスミをカラスに奪われます(笑)。
天日干の期間は魚卵サイズによりますが、目安は2週間程度で、大きなサイズになれば成る程長い期間がかかります。
天気の良いときは出来るだけ天日にあて、日が照ってないときはキッチンペーパーに包んで冷蔵庫内で乾燥させます。
冷蔵庫内は結構乾燥が進むので、それも利用します。
天日干しの終了は、飴色具合と固さ(乾燥具合)で判断します。
固さは強く押して、少し凹む位の固さです。固すぎれば、カラスミのネットリ感がなくなるし、柔らかすぎれば(水分が多い)、保存性に難があります。
天日に当てるほど飴色になりますから、もしまだ飴色度合いが足りないのに、固さは十分でこれ以上乾燥させたく無い場合での冷蔵庫保管は、PE袋に入れて保管し、乾燥が進まないようにします。
今回は12日間で干しあがったようです(下写真)・・・12/21日
No.1の重量変化は
血抜き前生卵250.5g→塩漬け後213.0g(85.0%)→塩抜き後247.5g(98.8%)→天日干し後169.3g(67.6%)。
No.2の重量変化は
血抜き前生卵257.0g→塩漬け後223.5g(86.9%)→塩抜き後242.0g(94.2%)→天日干し後173.8g(67.6%)。
仕上がりの重量減度合いは、元々の水分量が異なるので、毎回異なった値を示しますから、単なる目安で、この%なら完成という訳ではありません。
それぞれの腹皮を外しました。
最終的には取り外すのですから、早く乾燥させるためには、もう少し早めに外すほうが良いかも知れませんが、重量変化を同じ条件で測定するために、今回は仕上がりまでつけたままにしました。
外すときに傷つけて卵膜を破いてしまう可能性がありますから、外すとしても、塩抜き完了以降が良いと思います(下写真2枚)。
さてさて、最後が肝心。
もうカラスミとして食べられるけれど、この手の塩蔵品は熟成させると旨みが倍増し、又塩味もマイルドになってきます。
我が家は大抵1年は熟成させてから食べるので、カラスミは年中あります。
もちろん一切の添加物無しで長期で熟成出来るには、しっかり作られたカラスミでなければならないし、それなりのパッキングも必要です。
乾燥不足で水分活性が高ければ、長期熟成に耐えられるべくもなく、かといって乾燥させすぎれば固すぎてカラスミのネットリ感が台無しです。
乾燥度合いは天日乾燥の仕上がり判断でキッチリやるとして、折角ジャストの乾燥度合いに仕上がったカラスミだって、そのままではどんどん乾燥が進んでしまいますから、これ以上乾燥が進まないように、真空パックがお奨めです。
我が家では、天日干しが終了したカラスミは、表面をアルコールスプレーで殺菌した後、アルコールが乾いたら、表面に黴防止用にオリーブオイルを塗布し、真空包装して完成です。
真空包装袋には遊びでオリジナルの食品シールを貼っています。
この方が差し上げても喜ばれるし、話のタネにもなりますから、結構楽しい小技です。(下写真)
今期最初のカラスミ作りですから、一通り順当なケースでの作り方の説明を記述しました。
このブログには、カラスミ作りに関して色々な検索キーワードで訪れる方が沢山おられます。
そのキーワードを見ると、例えば、魚卵がざっくり切れている場合はどうするかとか、多少順当でないケースでの対処に迷われて、来ている方も多く見られます。
これまで作った沢山のカラスミの製作経過はカテゴリ[自家製カラスミ]で見ることが出来ます。
その何処かに、又はコメントのやり取りの中に、大抵の場合の解決策を見つけることが出来るかも知れません。
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